クーリングオフ
クーリングオフとは?
民法による契約の原則では、いったん契約が成立すれば契約は拘束力をもち、契約当事者はお互いにこれを守らなければなりません。一方的に契約を解消することは原則として認められません。
しかし、訪問販売などの場合には、消費者と事業者という対等性を欠くもの同士の契約である上に、弱者である消費者にとって予告もなく、いきなり不意打ち的であるという不利な取引となっています。その結果、消費者被害が非常に起こりやすいのが現状です。
そこで、消費者被害が多発し社会問題となった取引に対して、客観的に契約内容を明確に確認することができるように契約書面等の交付がされて、消費者が契約の内容を確認できる環境になった後に一定期間に限り、契約の締結について冷静に熟慮できる機会を確保した制度(クーリング・オフ)を設けました。(1972年の割賦販売法改正で導入)
したがって、クーリング・オフにより申込みを撤回したり契約を解除する場合には、理由は必要ありません。消費者が、その契約は自分にとって不必要だったと判断したら、無条件に契約の解除ができるのです。
但し、クーリング・オフができる契約は法律で決まっています。典型的な例では、訪問販売や電話勧誘販売、マルチ商法などです。
その他にも、一般的には、エステ、家庭教師、英会話学校、塾などの継続的なサービスを受ける契約や最近流行のパソコンを利用した内職(SOHO)商法、クレジット契約などがクーリング・オフができる対象と定められております。
さらに、クーリング・オフをする為にはその契約の内容が法律によって指定された商品・サービス・会員権でなければなりません。
なお特定商取引法改正により、新たに「過量販売規制」が導入されました。
この制度は消費者の日常生活において通常必要とされる分量を著しく超える商品やサービスを提供する契約について、原則として、契約締結日から1年以内であれば解除できる制度です。
平成21年12月以降に結ばれた契約であれば、この制度を利用して契約を解除することが出来ます。
従来は購入した量が多いというだけでは契約を解除することが出来なかったので、消費者保護の点では重要な制度が創設されました。
クーリング・オフ期間
クーリング・オフ期間は、原則として「契約の内容を明らかにした書面の交付の日」を1日目として計算します。この場合の書面は、法律で記載すべきことが義務付けられた事項がすべて正確に記載されていることが必要です。したがって、書面の交付がされていない場合や、記載事項に不備や虚偽がある場合にはクーリング・オフ期間は起算されません。よって、このような場合にはクーリング・オフ期間が経過していても、原則としてクーリング・オフをすることができます。
訪問販売 | 8日間 |
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電話勧誘販売 | |
特定継続的役務提供 | |
訪問購入 | |
連鎖販売取引 | 20日間 |
業務提供誘引販売取引 |
なお、通信販売にはクーリング・オフの規定は設けられていませんが、「返品の可否、返品が可能な場合は時期、方法等」に明確な表示がない場合は無条件に返品できることが定められています。
特定継続的役務とは
「特定継続的役務」とは、現在、以下の6役務が特定継続的役務として指定されています。
特定継続的役務 | 期間 | 金額 |
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いわゆるエステティック人の皮膚を清潔にしもしくは美化し、体型を整え、または体重を減ずるための施術を行うこと |
1月を超えるもの | いずれも5万円を超えるもの |
いわゆる語学教室語学の教授(入学試験に備えるためまたは大学以外の学校における教育の補習のための学力の教授に該当するものを除く) |
2月を超えるもの | |
いわゆる家庭教師学校(小学校および幼稚園を除く)の入学試験に備えるためまたは学校教育(大学および幼稚園を除く)の補習のための学力の教授(いわゆる学習塾以外の場所において提供されるものに限る) |
2月を超えるもの | |
いわゆる学習塾入学試験に備えるためまたは学校教育の補習のための学校(大学および幼稚園を除く)の児童、生徒または学生を対象とした学力の教授(役務提供事業者の事業所その他の役務提供事業者が当該役務提供のために用意する場所において提供されるものに限る) |
2月を超えるもの | |
いわゆるパソコン教室電子計算機またはワードプロセッサーの操作に関する知識または技術の教授 |
2月を超えるもの | |
いわゆる結婚相手紹介サービス結婚を希望する者への異性の紹介 |
2月を超えるもの |
- 「家庭教師」および「学習塾」には、小学校または幼稚園に入学するためのいわゆる「お受験」対策は含まれません。
「学習塾」には、浪人生のみを対象にした役務(コース)は対象になりません(高校生と浪人生が両方含まれるコースは全体として対象になります)。 - 入学金、受講料、教材費、関連商品の販売など、契約金の総額が5万円を超えていると対象になります。
- 役務の内容がファックスや電話、インターネット、郵便等を用いて行われる場合も広く含まれます。
相談事例
Q 久しぶりに会った同級生の友人から、健康食品や化粧品のネットワークビジネスをしないかと誘われた。30万円分の商品を購入して入会し、新たな会員を勧誘すれば報酬が得られると勧められ、会員になった。しかし、マルチ商法に騙されているのかもしれないと思い、退会したくなった。健康食品等は3万円相当の商品を開封、使用しました。契約してから2カ月になるが、解約して未使用の商品を返品したいです。返金してもらえますか?
A お気づきのとおり、これらの取引は消費者被害を生みやすい商法であるため、特定商取引法で連鎖販売取引(マルチ取引)として厳しく規制されています。
特定商取引法では、連鎖販売取引のクーリング・オフ期間を通常の8日間より長く20日間としており、その間であれば無条件で契約をやめることができます。クーリング・オフ期間が過ぎてしまった場合も、将来に向けていつでも契約をやめることができます。
また、一定の条件を満たせば手元にある商品を返品することも可能です(「返品ルール」という)。その条件とは、新規契約から1年未満の解約であること、納品後90日未満で未使用の商品であることです。返品ルールにしたがって商品を返す場合、事業者は代金の1割を超える解約損料は請求できないとされています。
事例の場合はいつでも中途解約することが可能で、新規契約から1年未満で、かつ商品は納品後90日未満での解約なので、上記の返品ルールの適用条件を満たします。したがって、購入した30万円分の商品から使用した3万円分を除く27万円分の商品を返品すれば、少なくとも27万円の9割を返してもらえます。
Q 英会話教室へクーリング・オフを伝えたのですが、教材についてはクーリング・オフできませんと言われました。全部クーリング・オフできませんか?
A 英会話教室の授業を受けるに当たって、教室で使用するのに必要として購入した教材についてもクーリング・オフが可能です。
英会話教室そのものについてクーリング・オフが認められても、CD等の関連商品の販売に係る契約についてクーリング・オフが認められないと消費者が十分に保護されないことになるため、関連商品に係る販売契約についてもクーリング・オフをすることができます。(ちなみに関連商品についてのみのクーリング・オフはできません。)
期間内でもクーリング・オフができない場合
訪問販売と電話勧誘販売の場合にはクーリング・オフ期間内であってもクーリング・オフできない場合があります。
1つは、契約の際に代金を全額支払って商品の引き渡しも終了してしまう現金取引の場合で、販売価格が3000円未満の取引の場合にはクーリング・オフはできないと定められています。
(但し、この場合は、3000円未満の現金取引の場合はクーリング・オフの対象とはならない旨を契約書に記載することを必要とされております。)
2つめは、訪問販売と電話勧誘販売については、特定商取引法の政令で消耗品として指定された7品目については、契約後商品の引き渡しを受けた後に消費者が使用した場合であり、交付された書面に「当該商品を使用するとクーリング・オフ期間内であってもクーリング・オフができなくなる」旨の記載がある場合には、使用済みの商品についてはクーリング・オフができないと定められています。
しかし、未使用の他の商品についてはクーリング・オフ期間であればクーリング・オフができるので、あきらめずにクーリング・オフでの契約解除をしましょう。
クーリング・オフの方法
クーリング・オフは書面で行うこととされています。
ただし、書面によらず口頭でクーリング・オフをしたとしても、相手方が認めていたり、客観的にクーリング・オフが行われたことが明白である場合には有効とされています(福岡高等裁判所平成6年8月31日判決)。
しかし、後々のトラブルを考えて、内容証明郵便を配達記録付きで送付するのが最も確実な方法でしょう。
クーリング・オフの効果
クーリング・オフには事業者の承諾は必要ありません。
業者は、その契約に関して受領した一切の金銭を速やかに返還しなければなりません。引き渡し済みの商品がある場合には、業者に引き取りの義務があります(業者着払いで可)。
また、クーリング・オフによる契約解除の場合は、販売業者は消費者に対して、解約金・違約金・損害賠償など、いかなる名目にもかかわらず、一切請求することができません。
クーリング・オフ妨害の場合
消費者がクーリング・オフをしようとすると、「この契約はクーリング・オフできない」と嘘をついて拒絶したり、脅かして契約の継続をせまるケースが少なくありません。そこで、2004年の特定商取引法の改正の際に、業者に同法でクーリング・オフ妨害として禁止されている行為があったためにクーリング・オフの行使が妨害された場合には、消費者はクーリング・オフ期間が経過していてもクーリング・オフができるものとしました(特商9条)。
行政書士に依頼するメリット
迅速に事例に応じた書面を作成できる(クーリング・オフは時間が重要!)、相手方への心理的なプレッシャーなどが上げられます。業者も売ることが商売です。相手が素人だと思うと様々な妨害行為を仕掛けてくるかもしれません。それに対処する精神的な疲労も軽く考える事はできないしょう。
行政書士に依頼すると費用はかかりますが、業者も法律家が相手となるとスムーズに解決至るケースが多いです。結果、煩わしい事から早く開放され平穏な日常に戻れるメリットを受けられると思います。
もちろん書類を作成して終わりではなく、その後についてもサポートさせて頂きますのでご安心ください。
とにかくクーリング・オフはスピードが命です。
悩んだらすぐに相談されることをオススメします。